私が、本格的に受験勉強を始めたのは、5月の河合塾の全統マーク・記述模試の後だった。それまでは、何となく大学生になれると思っていた。正直、どこの大学でもよかった。だが返却された残念な成績を見て反省した。
今までの自分の人生、一度も嫌なことに取り組もうとしなかった。嫌なものは避ける。本当にそうだった。私にとって受験とは、この性格との闘いだった。
とりあえず、8月のマーク模試まで本気でやろうと心に決めた。英単語を覚えようとした。数学は計算問題からはじめた。国語にいたっては日本語能力検定だった。毎日が嫌だった。英単語は次の日にはほとんど忘れた。数学は計算しかしない。国語は、あたりまえのことばかり書いてある。嫌で嫌で仕方がなかった。本当に嫌だった。でも、8月まではと自分で決めていたので、それまでは頑張ろうと思った。
8月のマーク模試は、私にとってはある意味で一次試験だった。目標の点数を1点だけ上回った。本当に嬉しかった。このとき、本気で名古屋大学へ行こうと思った。赤本を親に買ってもらい見てみると、到底解けそうに無い問題が並んでいた。正直、とても焦った。
だが、勉強が楽しく思えた。小学校の算数から嫌いだった数学は、どんな問題でもまったくわからないということはなくなった。英単語も、100個覚えて99個忘れてもいいと思った。一つ覚えていればそれでいいと思えた。心に余裕ができた。まだ時間はあると思えるようになれた。私の成績は、ひいき目に見ても五分五分。普通に見ればおそらく無理だった。私は、五分五分なら合格できると思うようにした。
そんな気持ちでセンター試験を受けた。結果は自己ベストだった。目標点を大きく越えていた。だが高木先生は、「そうか。」としか言わなかった。このとき私は、センターは通過点だ、と教えられた気がした。何度もやめようと思った塾だったが、このとき本当にいい塾だと思った。おかげで、すぐに前期の勉強に入ることができた。
9月からは、ポジティブな考え方をしてきた。試験中でも同じだった。楽観的な考えは必ずしもよいとは言えないが、受験では非常によかった。
受験は自分の努力も大切だが、必ずどのような形でも支えてくれる人がいます。だから私は受験を支えてくれた親や塾、学校の先生方に「ありがとう。」と言いたいです。
長々と1年間を書かせてもらいました。嫌なこととはじめて向き合った1年でした。少しは性格が変わっていてくれるとうれしいです。これからの人生でも嫌なことと向きあうことができるといいなぁと思っています。偉そうに合格体験記を書いていますが、いたって普通の人間です。塾では、人と話すことがなかったので、私のことを正直知らない人のほうが多いと思います。
最後になりますが、3浪しても無理と言われた大学に現役で合格させて下さった高木先生、滝野瀬先生、意味のわからない言葉の羅列だった答案を添削し、合格できる答案にして下さった中根先生、嫌いだった数学を得意科目にして下さった小林先生、理解するとはどういうことかを教えて下さった石川先生、正直さっぱりだった古典を教えて下さった早津先生。本当にありがとうございました。いい先生方に巡り合えた私の受験でした。今まで、ありがとうございました。
そうか、なんどもやめようと思ったか。確かに一度、講師と激突して、途中で帰ってしまったことがあった。水面下でいろいろな動きがあった。
…もう時効か? あの時、実は、君の知らないところでいろいろあったのだよ、A.K君! いいかな、生徒が苦しんでいるときは、ちょっと立場や位相は違うけれども、その生徒が思ってもいないような人が、別の角度で、別の立場で必死に何かを考え、何かを模索していたりするものなんだ。そういうことは、多分、信じていいことなのだと思う。
そして翌日、彼としばらく話し込んだ。厳しく辛い指導だったのだと思う。このとき、二つの選択肢があった。もう辞めようと半ば思っている彼をなだめ、落ち着かせるために全力を上げるか、あるいは、私が正しいと思うことについては一線を引き、譲歩しないで対するのか。後者は大きなリスクがあった。けれども私は後者を選択した。
生徒が泣こうが喚こうが、絶対に引き下がってはいけない一線があると感じることがある。教室の民間の経営体だからリスクは好ましいことではないけれども、でも、ある一線を譲歩すると、指導ということの根っこが崩れるように思う。名大の合格に絶対に避けては通ることができない内容を打ち出していると判断するならば、そこは下がってはいけなかった。そこで一歩引くことは、いかにも優しげなふりをして、その実、合格のために必要な指導を放棄することを意味すると思えた。
きっとあの時、彼は本当には納得しなかっただろうなぁ、と思う。そうでもないのかな?覚えいているかな?
そして名古屋大学の経済学に合格した。
あらかじめ約束されていたような合格ではなかった。よく頑張ったと思う。
不思議なもので、力があるから合格する、足りないから合格しない、まぁ原則的には確かにそうなのだろうが、現実の合否は必ずしもそうならないことがある。先のSK君もそうだったけれど、AY君も、妙に志望校については腹が座っているところがあった。志望校どうする?と聞くと、やけに迷うことなく名大と答えていた。確かにはじめは勉強、ほんとうにイヤイヤやっていたのだろうけれど、でも、どこかで自分についてのケジメのつけ方を知っているようなところがあった。あるいはそうしたことをこの受験を通して身につけていったのかもしれない。
きっとこれが合格をもぎとった、最深の力だったのだと思う。
合格の力は、君の内部からの力だと思う。もしこの受験で少し変わったのなら、これからもっともっと変わっていくかもしれない。そうやって未来を創り上げていくのだろうと思う。これからも頑張って。
PR