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学習論 西林克彦氏の本を読んで

  こういう仕事をやっていると、つくづく、人間対人間の格闘だと思う。全力を振り絞って一人の生徒と格闘しても、(それは本当に格闘です。ここはなんだか格闘技場のような教室だな、と自分でも思うことがある。) その結果を最終的に決定するのは、その生徒自身だから、どうにもならないこともある。またその逆もある。

最近、学習論に関する本を3冊読んだ。
西林克彦氏のもので、『間違いだらけの学習論 なぜ勉強が身につかないのか』(新曜社)、『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』(光文社新書)、『あなたの勉強法はどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書)。
内容は参考になる。とくに『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』と『あなたの勉強法はどこがいけないのか?』は中3から高1,2くらいのときに読むと良いと思う。後者のほうが生徒の目線を意識しながら、じっさいの勉強方法について書かれている。けれどももし1冊読むなら、『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』を勧めたい。ものごとを知る、学ぶ、そのために読む、ということについて、見た方・考え方が変わるのではないか、と思う。

これらの本の内容はいずれ紹介したいと思っている。

けれども、それらを読んで感じたことが「人間と人間の格闘やなぁ」ということだった。

書いてあることはよくわかる。分かりすぎるくらいよくわかる。日々感じていることに、認知心理学の立場から明快な理論と概念が、またそれを裏付ける実証性が与えられるような気がする。
知識を切り縮めようとするような学習がどうしてダメなのか、丸暗記をしているだけではどうして問題を解決できないのか、そもそも同じ授業を受け、同じテキストを使っていて、さらには同じ学習量であってもどうして学力に差が生まれるのか、そもそも学力はどのように構成されているものなのか。それは「素質」などの一言でかたがつくような簡単な問題なのか、素質なんだよ、というならば、それはもう改変不可なのか。
そうした様々な「学習」にかかわる問題点について筆者は明快に述べてゆく。

まったくその通りだ、と思うことは多々ある。
けれども、だ。きっと問題はその先にある。
ひとりひとりの生徒は、15年、16年、17年生きてきて、いま目の前にいる。その年月は、そのまま言語を始め、様々な知識の蓄積としてある。しかもその蓄積は、実はバラバラの要素になっているのではなく、西林が思っている以上に密かに関連しあっているように感じる。AとBをバラバラに覚えているとそれは使えない知識になってしまいます。全くそうだ。しかし問題はさらにある。本来、AとBが関連付けられていなくてはならないのに、そこが切断されている代わりに、本人も自覚がない間に、論理だかイメージだか分からないもので別の何かと関連付けられていることがおおい。つまり同じAということが、生徒によって別の文脈に置かれていることが少なくない。それが10年以上の蓄積のなかで、強固な構造物をつくりあげている。そして、例えば数学的に正しい理論と概念は、この構造物をいったんたたき壊さなくては全くつかむことができなかったりする。そうでなければ、提示された概念もまた別の文脈に自動的におきなおされ、予期せぬ何かを産み出していく。そうした事例にいったいどれほど遭遇してきたことか、と思う。

正しいことを教えるのはある意味で簡単なことのように思う。あるいは、そんなことは教科書や参考書に書いてある。
つまり問題は、正しいことが提示されても、それが別様の理解を生み出すことにあるように思う。


そうしたことを考えると、詩学と科学哲学についての示唆に富む文章を書いてきたバシュラールの認識論的障害、認識論的切断ということの重大性が身に迫ってくるような気がする。
キリスト教神学とその一環としてのアリストテレスの自然学から近代科学が離陸するに際して、激しいパラダイムの転換があったと述べたのはTh.クーンだった。そして私は、その転換が、<切断>というある種の破壊を伴うものとしてあったのだろうと思う。
バシュラールは、無知や誤謬は空っぽなのではない、という。それは強固な織物を作り上げている。だからその織物を、その構造物をいったん切断しなくては、新しい何ものかを注ぎこむことはできないのだと述べる。

10数年かけて織り上げられてきた構造物とのたたかいは、本当に本当に格闘だな、と思う。

(こんなことをここに書いても仕方ないような気がしないでもない。けれども、書いておきたい、と思った。)

(高木)
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